フィンランドより

―― イエスさまのことを伝えに、どんなに遠いところでも行ってみたい。危険でも。福音を聞いたことのない人がいる地球の反対側でもいいな・・・。子どもだって宣教に出ていっていいでしょう?そんな旅をアレンジできないかな?

エリナ9歳、1998年、Jippii活動初期

 

小さいエリナの願いは、年月を経てはっきりと答えられた。子どもたちは大きな神さまに小さなことをすることができる。今も神さまは、小さい男の子のお弁当をイエスさまに捧げるとき、祝福されるのだ。子どもたちの宣教旅行は1998年から始まった。

 

アンニーナ7歳、初めての宣教旅行

 

さいしょに飛行機に乗った。アンニーナが言う。

―― ぜんぜん怖くないよ、前にも飛行機にのったことあるもん。2ヶ月の赤ちゃんのときね。

飛行機の次はハンガリーを通ってルーマニアに、バスと地下鉄と電車とミニバンでつづく。アンニーナは長年はたらいている仕事人のように、背中にリュックをしょって旅をともにする。


乞食

レシタの町に到着したとき、アンニーナは生まれて初めて乞食をみた。

―― その男の人はすごくみじめな感じだった。わたしの持ってるお金を全部あげたいって思ったんだけど、持ってきてなかったの。家には15ユーロあったけど。全部あげられたのに。もちろん、また後であの乞食さんのところに戻ってこようって、ママに頼んでみたんだけど。


友だちが現れた

アリサは10歳で、天からやってきたみたいに、そこに現れた。ふいに気づいてみると、頼んでた通訳がだめになってて、代わりにそこにルーマニア人の子どもが立っていた。その子は英語からルーマニア語に、その逆にと、スラスラ通訳していった。

子どもたちはフィンランドにいるときにルーマニア語で歌えるように歌詞を暗記していた。何ていってるか意味がわかる子は誰もいなかったけど、練習は楽しかった。ルーマニアに来てわかったのは、発音があんまりよくなくて言葉がきちんと伝わっていきそうにないこと、、アリサが来るまでは。アリサはフィンランドの子どもたちに、一語一語、発音のしかたを練習させた。すると、そのうちに歌はまるでそこに住んでる人が歌ってるみたいに響きだした。そして気付かないうちにアリサも、Jippiiの歌をフィンランド語で歌い出した。


アニナでのアンニーナ

最初の子ども礼拝はアニナの町で計画された。それはアンニーナにも都合のいいこと、まるで自分の町のようだったから。礼拝では、アンニーナ、ハンナ、ミーカがアリサと一緒に歌った。そして最高によかったのは、礼拝の最後に2〜300人の子どもたちが、イエスさまが心に入って下さるように祈ったこと。

―― イエスさまを信じるようになる人がいると思ってたけど、あんなにたくさん信じるようになるって思わなかった。

―― ひとり障害のある子がいて、わたしはかわいそうになった。歩けないんだもん。

とアンニーナ。


Jippiiの歌をつくったよ

―― わたし2曲作ったけど、まだ歌詞だけなの。

ある日、アンニーナはそう言って大きなノートを見せた。それからしばらくしてまた言った。

―― メロディーもできた。

アンニーナはラッセ・ヘイッキラの元に走って行き、7歳の確信でもって言った。

―― こっちきて、音楽人間!


子どもサイズのドア

全て何事もなく進むように見えていたけれど、ある日ドアが閉ざされた。

―― 学校には入れないんです。

現地コーディネーターのサミュエルが言う。

―― 申し訳ないんですが、これらの学校はみなルーマニア正教会のもので、歌をうたったり福音を伝えることは禁止されています。

ドアは閉まったけど、長くは続かなかった。

―― 子どもたちが来てもいいか、わたしの先生に聞いてみるね。

アリサがそう言って、ドアが開いた。子どもサイズのドアだ。

―― 先生が、子どもたちは歌いにきてもいいって。でも大人はだめだって。

 

子どもたちは英語でメッセージする練習をして、出来たてほやほやのルーマニア語のJippii読本をひとかかえ持っていった。その朝、心臓をどきどきさせながら、父・母たちは小さな宣教師をルーマニアの学校に送り出した。子どもたちが戻ってきた頃には、メッセージも終り、歌もうたって、読本の大きな束もなくなっていた。アリサは今回も信じられないほどに通訳をやってくれた。子どもたちが言う。

―― 3つの学年に本を配ったんだけど、そしたら出て行かされちゃった。

―― ハンナはごみの穴に落っこちたけど、それ以外はみんなうまくいったよ。


アンニーナは本屋で、小さくてとってもかわいい犬に出会った。

―― ママは私にはぜったいこんな犬を買ってくれない。

アンニーナがそう言うので、私が犬の値段を聞いてみると、3万レイ=約1ユーロだった。こんなかわいい犬には、宿舎にいるママの心も揺れるに違いないと確信して、私はこう言った。――じゃ、買ってあげる。

それから犬は、どの子ども礼拝にもついていった。ときには思いっきりベンジージャンプをしたり、訪れた町の野良犬たちと知り合ったり。白い足先が黒くなっていくほど、愛すべき存在になっていった。

ある夜、寝る前にアンニーナはママにこっそり聞いた、

―― ママ、6ユーロか7ユーロ余ってる?買いたいものがあるの。

―― まあそのくらいならあると思うけど、何を買うの?

―― あと6匹か7匹、犬を買おうかと思って。


アンニーナのささげもの

土曜の朝、アンニーナは心臓が痛くなるくらいに泣いていた。

―― ママ、ここにクルタクトリを置いてっちゃだめ!ママが自分で作ったんじゃない、フィンランドに一緒に来なくちゃだめなの!

ママが何を説明しても効果なかった。指人形クルタクトリはルーマニアの子どもたちのために作ったこと、そしてたくさんのルーマニアの子どもにイエスさまのことを伝えるためだってこと、みんながアンニーナに話してきかせたんだけど。

―― クルタクトリはここに置いてかない、

そう言うとアンニーナは最後には人形の頭をげんこつでたたいた。

 

土曜の夜はお別れのときだった。日曜の朝早くに出発で、その前にルーマニアの友人達にさよならをする必要があった。私達はさいごに、今までずっと彼らと一緒に練習して使ってきた、CSグッズが入った大きな袋をプレゼントすることにした。中には、いろんな色のボール、大きなハートの本、天国の階段、心のドア、小さいハートたち、15Lのさくらんぼが入っていたカゴ、びっくり袋、口がパクパクする大きな指人形二つが入っていた。ちょうど誰が何を手渡すかを決めていたとき、アンニーナがやってきて言った。

―― 私がクルタクトリを渡すから。

 

最初のJippiiルーマニア宣教旅行は2002年夏だった。翌年の宣教旅行で私達は、学校の先生たちが宗教の時間にJippii読本を使っていることを聞くことになった。